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夏も終わり。8月は本が売れないというのが出版社の常識。しかし新聞書評欄は各ジャンルの本の書評が目白押し。24日に限っては哲学、社会学などの...
夏も終わり。8月は本が売れないというのが出版社の常識。しかし新聞書評欄は各ジャンルの本の書評が目白押し。24日に限っては哲学、社会学などの硬派の本の紹介はあまりなかった。毎日、読売、産経、朝日の4紙から紹介しましょう。文中敬称略
今日は北京オリンピックの閉会式。そのオリンピックでベルリン大会(1936年)を論じたのが
デイヴィッド・クレイ・ラージ『オリンピック・オリンピック 1936 ナチの競技』(白水社、3500円)―読売、朝日―だ。この書を踏まずして近代オリンピックを論じることは不可能と読売の評者(佐藤卓己)はいう。ヒットラーのナチスドイツはこのベルリン大会で国民総動員体制を確立した。聖火リレーがこのベルリン大会から始まったが、本書ではナチのオリンピックに対して国際的なボイコット運動の記述が圧巻だという。「平和の仮面をつけた五輪」と読売の見出しをつけた。分析は黒人、ユダヤ人選手に焦点を当ててしている。朝日書評では「読みごたえがあるのは開会式や閉会式、各競技に関する叙述だ。臨場感満点の筆致が素晴らしい」(評者橋爪紳也)。オリンピックの余韻が残るなかでこの分厚い本を読むのは絶好の機会だ。
小説を紹介すると、
小林紀晴『十七歳』(NHK出版、1575円)―産経―は、著者の半自伝的恋愛小説。書評(評者海老沢類)によると、9・11テロの時にニューヨークに滞在した小林の体験が影響していると示唆していた。つまり、身近なささやかなものへの発見である「昨日の続きが明日ではない」(著者紹介「著者に聞きたい」から)。その発見がこの半自伝的恋愛小説を書かしたのかもしれない。十七歳の心象風景を描いたこの作品は若者の肖像を写真と文章で追った『ASIN JAPANSE』から13年目、5作目の小説。いあま1人の写真家の活動を追ったノンフィlクションの執筆中だという。
小説2作目は時代小説。
葉室麟『いのちなりけり』(文藝春秋、1575円)ー毎日ーは『銀漢の賦』で松本清張賞受賞した新人。今回は架空の主人公に江戸時代の「葉隠」の心を描いた秀作を出した。評者湯川豊は本格的時代小説と高い評価を与えている。主人公は佐賀鍋島藩の支藩に仕える雨宮蔵人。妻に父を討つように命じられるが、妻を愛する蔵人はできない。同じく命令を受けた従兄弟深町右京が討ちその罪をかぶることに。妻は病死した前夫のことが忘れられない。しかし蔵人の愛を知り気持ちを向けることに。「葉隠」成立の裏話とも読める時代小説と評者はいう。
小説ではほかに
宮尾登美子『錦』(中央公論社、1890円)ー朝日ーが紹介されている。作家の阿刀田高が評者。「龍村の帯」で知られる典雅な織物の創始者龍村平蔵の生涯を描いた伝記小説。大阪の船場で育ち、京都で独創的な織物開発に情熱を注いだ龍村を描いた作品を、阿刀田は舟に乗るときに似て心地よいか、否かにたとえ、「確かな安心感の中で読み進むことができる」と書いている。
文学評論では
中島一夫『収容所文学論』(論創社、2625円)−朝日ーがある。「文学」の外に出ようとする強い姿勢に貫かれた本だ。「文学」の外に出るとは、「快楽」や「戯れ」としての文学、慰安や癒しを与える文学から飛び出すこと。いまの文学的状況を「収容所」とたとえている。「筋金が入った思考が可能になる」ことを目指す。それが言葉の獲得によるのだが、評者奥泉光もそれを求める作家なのだ。
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