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夜間中学その日その日(25):守口夜間中学 白井善吾

 夜間中学のある日の出来事に関連させて、考えていることを書いていこうと思う。執筆者は持ち回りで,変わっていく。
 2学期が始まって、1週目の金曜日、守口夜間中学に20数名の守口市内小、中学の教員が集まった。日ごろ温めている学習内容を、夜間中学で実践する。夜間中学生の胸を借りるのだ。
私も20数年前、夜間中学で授業をやってみたい。そんな思いをもって、守口夜間中学を訪ねた日のことが浮かんできた。廊下を何度も行き来して、教室からもれてくる教員の声と、それに応じる夜間中学生の声を聞くだけで、一度授業をやらせてくださいということは口に出せず、校門を後にしたことがあった。
その日、来校の20代30代前半の教員は違った。一人の授業をやってみたい、その思いを集団の声にして1学期に、夜間中学に申し入れがあり、この日となった。
7月、8月に夜間中学に集まり、授業参観を行い、研修を重ね、授業の進め方など構想を練り上げていかれた。
どうすれば夜間中学生に楽しんでもらえる授業にすることができるか、さまざまな意見が出た。「料理はされる方ばかりですか」「料理から文化を引き出して交流になればと思っている」「ホワイトボードが小学校にあるから当日持ってきます。発表会をしよう」。野菜カードをカラフルに仕上げ、授業者同士で劇を行い、導入にしよう。準備は整った。
この日、3班に別れ、日本語、数学、社会の3教科の授業が行われた。
授業者が全体の進行を図り、4〜5人の教員が分かれて1人〜数人の夜間中学生と学習を進めていくスタイルだ。なかなかのもの、初対面にもかかわらず、夜間中学生の眼の輝きが違う。
家族と一緒に食べる料理をつくるという想定で、店に買い物に行く、どんな材料をどれだけ買うか、費用はいくらかかるか。それを計算する、数学の学習である。ホワイトボードや黒板には、白菜、ニラ、にんじん、肉、等授業者が準備した絵入りカードが貼り付けられ、夜間中学生が書き出した、計算表の前でその料理方法、その料理への自分の拘り等を夜間中学生が前にでて一人ひとり発表する。発表を聞いている夜間中学生からは質問や意見が飛び出す、変化に富んだ学習展開である。
授業終了後、教科毎の班に分かれ、反省とその報告交流が行われた。
「真剣に取り組んでいただいた」「積極性がすごい」「これが授業だ」「学習者と、授業者が話し合いながら学習を作り上げていく、そんな経験ができた」「初対面の私たちに、自分を語っていただいた。私もそれに答えるため、(夜間中学生に)自分を語った」「夜間中学生の方々は考えることを止めない、考えたことを、それを言葉にして学んでおられた」「学び、学習、授業について考える機会となった。こんな経験ができたこと、幸せだ」「はじめ授業の組み立てで悩んでいるのを見て、自分は授業をしなくて楽だ、と内心思っていた。しかし、授業をされている様子や、今の発言を聞いて、置いて行かれたと感じている」交流は続いていった。
数日後、感想が届いた。紹介する。
「一方的にしゃべり、怒り、子どもたちに余裕を持たずに接している自分ですが、今回の授業に参加することでもっと相手(子どもたち)のきもちを受け止めようという気持ちになりました」
「学びに来られている生徒さんたちの態度というのが印象的で、数年前に来たときとやはり同じでした。授業で学びたいという強い気持ちが伝わってきました」
「生まれてはじめての体験で、心の中ではドキドキでいっぱいでしたが、楽しく授業を行うことができました。学びとは教師と生徒のコミュニケーションであり、コミュニケーションの大切さを改めて感じることができたと思います。授業とはみんなで作っていくものだと改めて感じました」
「楽しみながら、「わかった」「できた」の発見をされている姿が、学びの原点なんだと本当にいい経験をさせていただいたと思いました」
「初任者研修のとき、後ろから見ていて、こんな授業できるのかと思っていましたが、今の能力と経験で授業をやる機会が来るとは思いませんでした。生徒さんの熱心さは、やはり、普段の学校とは違い、自分をやる気にさせてくれましたし、手を抜けないくらいの覚悟をさせてくれました。しかしやはり、いくつかの未熟な部分もあったので、悔しい思いをしました。また機会があればがんばりたいです」
夜間中学生も手紙を書いた。
「先日は守口夜間中学に来てくださってありがとうございました。とても楽しかったです。70歳を過ぎた、年寄りたちの勉強を見られてどう思われたでしょうか。
あの憎い戦争さえなく子どものころに学べることができていれば、この時間、普通の年寄りたちと同じように、家でゆっくりとくつろげるはず。雨の降る夜はずぶぬれになり、寒い夜は体をふるわせ、一文字でもと夜間中学に。なかなか頭に入りません。休みたいときもあります。一日休めばみなについていけないと思うと、やっぱり行かなければと、自転車を走らせる。
私は76歳。体の続く限りがんばって生きたいと思っております。折がありましたら、また夜間中学に来てください。
生徒一人ひとりに目を向け、えこひいきのないように、生徒たちからしたわれる先生になってください」

夜間中学が今あることの意味を改めて考えることができた。
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