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[T141] 日曜日新聞書評欄簡単レビュー:川瀬俊治

 日曜日恒例の新聞簡単書評レビュは毎日、日経、朝日の3紙から。ジグムント・バウマン『新しい貧困 労働、消費、ニュープア』は詳しく論じること...

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日曜日新聞書評簡単レビュ:川瀬俊治

日曜日恒例の新聞簡単書評レビュは毎日、日経、朝日の3紙から。ジグムント・バウマン『新しい貧困 労働、消費、ニュープア』は詳しく論じることから始めよう。文中敬称略。
 ジグムント・バウマン『新しい貧困 労働、消費、ニュープア』(青土社、2520円)ー日経、朝日ーは貧困の歴史的な形成過程を描いた点で刺激的な本だ。詳しい書評は朝日だが、簡潔にわかりやすいのは日経の方だ。ポイントは労働の審美性の変化だろう。労働の倫理感は近代の工業化で生まれた。「働かざるもの食うべからず」という言い方がいつごろから生まれたのかは知らないが、道徳倫理に労働倫理が結び付いた。ここに労働の審美性は忍び込んでいない。本章とは直接関係ないがマックスウエバーの近代社会の倫理形成研究などからも論究すべき課題だろう。本書のキーポイントである「審美性」とは消費社会における「やりがいのある仕事」と「やりがいのない仕事」という個人の嗜好性にもとづくものだが、しかし個人的ではなく、消費社会から規定されたものなのだ。テレビなどのタレントが若者に大いなる憧れの対象になるのは、収入が多く「世の中」から注目されることにある。「世の中」とはいうまでもなく消費社会である。称賛されるタレントはコマーシャルに登用されることに代表されるように消費社会の消費に多用される。社会の有用性は社会に多用される規定をもつが、その土台が消費社会というわけだ。「やりがいのある仕事」以外のはじき飛ばされたもの、つまり自ら仕事を選択できないものは「欠陥のある消費者」(日経の書評から)として社会から疎外されることになる。ここまでは両紙の書評からはわかるが、以下がよくわからない。失業する場合、社会の「余剰」なるものという規定を受ける。「失業」から「余剰」の変化という消費社会での変化が生れるというわけだが、この「余剰」というとらえ方はマルクス経済学では労賃分析でお決まりの概念。それだけに「失業」から「余剰」に変わる消費社会というところがもうひとつ書評を読むだけではわからない。また消費社会分析は今村仁司が紹介してきたボードリアール(たとえば『消費社会の神話と構造』)が論究してきたように象徴性の問題につきあたる。シンボルとしての審美感が支配する労働現場は生産とは別の概念として形成されるわけだが、どう実質的経済概念である「余剰」と関係するかもわからない。やはり本書を読まないとこれらの疑問は解明されない。「余剰」の解決はかつては植民地支配で解決していたが、もう地球はいっぱいであり、18世紀から20世紀までの収奪型社会はとりえない。そこでローカルでの解決となり、「余剰」は解消されないことになる。解決の処方箋は本書では「労働と無関係に一定の所得を保障する制度」や「職人の倫理」の復権を説くー朝日の評者広井良典から。なおその処方箋の論究は道半ばというのが両紙の書評の結論。本書で提起された問題をさらに深める営みは新たな貧困の解決を探れる道を見つけることができるかもしれない。

 大川周明『回教概論』(ちくま学芸文庫、1050円)ー毎日ーは、あの大東亜共栄圏を目指した思想家大川周明である。戦前の1942年に出た本だ。「なぜいま?」といぶかることなかれ。大川のイスラーム研究はなお今日も学術的価値を有するからだ。病癒えて取り組んだのがこのイスラーム研究なのだが、なぜ国家主義者の大川がイスラーム研究を重要視したかは「大東亜の盟主日本が共栄圏をつくり世界の道義的統一を実現する夢を見ていたのではないか」(評者山内昌之)と解説の中村廣治郎の文が紹介されているが、評者山内は「夢と同時に理想実現を手法とモデルをイスラーム大征服運動の中に見出したというべきかもしれない」と書いている。大川とイスラーム研究は戦後の国家主義の思想に影響を及ぼしたということではなく、皮肉にも多文化理解の道を開いたという点が歴史の面白いところだろう。(第2次入力ー午後4時20分)
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