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「ストリートビューというサービス開始の日ー爆発的に増殖する深刻な問題を見つめて」(28):北口学

 インターネットと人権・差別の問題に関して従来語られてきたテーマ・論点には「プロバイダー責任法」や、総務省の違法有害情報への対応に関する判断基準(2006年研究会報告書)に基づいて、プロバイダーの事業者団体が「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」(2006・11・27)、日本政府が強力に推し進めてきた国家IT戦略(e-japan構想から発展してきたu-japanという政策)、「2010年までにITC国家社会の完成を目指す」という総務省
「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」最終報告書(2007年12月)、2006年4月1日から2007年3月31日まで、3677団体が参加国連「グローバルコンパクト(GC)」10原則(2004年6月追加)や、OECDプライバシーに関する8原則(日本政府も批准)や「多国籍企業ガイドライン」改訂版(2000年1月)、国連の人権促進保護小委員会「経済的・社会的・文化的権利人権に関する多国籍企業および他の企業の責任に関する規範案」とその注釈(2003年8月)、「企業の社会的責任や企業倫理」「CSR」関連などなど「グーグル・ストリートビュー」問題について必要かつ参考となる視点・情報は多々存在します。

 それらは既に豊富な情報や文献が既にネット上でも読めますから、私の連載ではすっ飛ばしています(苦笑)。大事なのは解ってるんですけど・・・。

 本音を言えば、通信事業者を保護する為って気配が濃厚な「通信事業法」や、企業の良心を頼りにする「CSR」も、ネット上の匿名掲示板差別書き込みの膨大さや、差別HP公開、グーグル・マップ差別地図公開といった差別事件の続発の前では・・・・という気持ちがあって・・・・。(文化・芸術関連のNGOの立場からはバラ色に思えた「企業メセナ」がバブル崩壊で吹っ飛んだ経験が今も私の心の中に苦い記憶として残っているからなのか?笑)

 「市民や、いま動き出している人々の活動や行動に結びつく原稿を!」という今、まさに対応が急務と緊急性を強く感じている私の現在のスタンスが「研究者的原稿は後回し」って気分にさせちゃうようです。
 でも、関心のある方はぜひネットで検索していただいたらいいかと思っています。(ぜひぜひ!)

 得意ジャンルの(苦笑)文部科学省が推し進めている「デジタル・アーカイブ」構想、文化庁のこれまでの「著作権」関連など、ストリートビューに関連しそうな部分に関する論考もこれからおいおい・・・がんばります(笑)。
参考となるHPをいくつか紹介させていただきましょう。
http://www.asahi-net.or.jp/~mg5s-hsgw/internet/
(インターネットと差別についてのHP)
http://www.jinken.ne.jp
(人権問題、CRSなどの情報が充実のHP)
http://blhrri.org/info/koza/koza_0156.htm
(経団連企業憲章などに関する講演録)

 上記のHPの中でも関心を引くのは企業としての人権尊重を掲げた日本経済団体連合会の発表した宣言について言及された講演録の下記の部分です。
 「製品・サービスの品質・安全性に関わる事故、個人情報・顧客情報の漏えい・紛失、証券取引法や独占禁止法といった市場のルールに違反する事件、さまざまな契約をめぐり消費者・顧客の信頼を傷つける行為など、不祥事が絶えないことを踏まえて、企業倫理の徹底を会員企業に促すために、「不祥事を起した会員に対する日本経団連としての対応および措置」を改訂」(「経団連企業行動憲章」)。
 企業倫理と企業責任をしっかりグーグル社の人々にはご理解いただいて、行動憲章の精神にのっとった、きっちりとした対応と情報公開・対応をしていただきたいものです。

 さて、現在の全世界におけるグーグル「ストリートビュー」サービスの展開地域、時期や内容の一覧はウィキペディア(Wikipedia)の「ストリートビュー」「サービス拡大の経緯」という項目に詳しい最新の記述があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Google
(以下 部分転載)
「・・・・(前略)プライバシー問題
Googleではプライバシーを軽視する傾向があると言われており、Google Earth並びにGoogle マップで利用できる、公道のパノラマ写真が見ることができるストリートビューを公開して以降、Googleと一般人とのトラブルが絶えない。2008年8月5日から日本でも公開されたが、公開当日から個人のプライバシーを侵害しているとして日本国内より非難が集中し、のちに申告された物だけぼかしを入れたり画像をごっそり削除されるなどの対処を行った。ただし、いまだにプライバシーを侵害しているとして非難されている。なお、日本のGoogleでもプライバシーを軽視するような傾向であるような発言を行ったGoogle社員がいる・・・・(後略)」

 多くの問題の指摘や活発な論議が重ねられ、日増しに問題性が明らかになってきているのですが、サービス開始の議論もほとんどなく、グーグル・マップやグーグル・カレンダーによる個人情報の漏洩・流出問題も存在しながら、誠意ある対応や十分な説明がメディアやHPからなされず、広汎な住宅地域の街角画像が公開されているのは日本だけであるという事実がはっきり解ります。

 「日経サイエンス」が先月特集した「ネットが蝕むプライバシー」という現状への警鐘が現実的な深刻な問題としてアメリカでも受け止められていることが伺えます。
http://www.nikkei-science.com/item.php?did=55812

「日経サイエンス 2008年10月25日発売 特集:ネットが蝕むプライバシー 1,400円(税込)」
「特集:ネットが蝕むプライバシー プロローグITとテロの時代にP. ブラウン(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 「プライバシーをめぐって寒風が吹いている。変わることなく保護されるものと思われていたプライバシーの領分が,技術の進歩と反テロリズムという“至上命令”によって劇的に,そしておそらくは後戻りできない形で変わろうとしている。
 約10年前,サン・マイクロシステムズ会長のマクネリー(Scott McNealy)は「プライバシーの死」を宣言,「それを受け入れるしかない」と述べた (後略)」

「問題提起 プライバシー2.0を考える E. ダイソン
 現代社会で一般市民のプライバシーが侵害されていることは疑いようがない。今日,ほとんどの米国人はネットでつながっており,そして多くの人は「いったいどうやって,私に関するそんな事実を知ったんだ?」と思った経験が一度ならずあるだろう。米国政府はさまざまな場面で市民の個人情報を収集し,その情報収集活動もわかりにくくなっている。誰かが,とりわけ政府が,私たちの素性を調べる試みをしさえすれば,もはや匿名のまま行動するのは難しい。
 一方では,個人情報を開示してもいいのではと思わせる状況も新たに生じている。1つは個別化医療(オーダーメード医療)が近く実用段階を迎えることだ。カルテなどから得られる詳細で正確な医療情報と遺伝情報があれば,患者ごとに最適の治療ができる。そうしたデータは疫学上の分析にも役立つので,社会全体の福祉を高めることにもつながるだろう。
 2つめは多くの人がソーシャルネットワーク(友人や知人などのつながりでできたネットワーク)のサイトで自身の個人情報を他人と共有して楽しむようになったこと。3つめに,これは好ましいことではないが,テロの脅威が高まっていること。(後略)」

 「日経サイエンス」に掲載されている、上記の代表的な2つの論文や「遺伝子情報とインターネット」は下記のネットでも公開されていて閲覧できるようになっています。上記は一部だけ抜粋、転載です。
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0812/200812_022.html
 
 また、下記のニュースも興味深いと思えます。
 本国アメリカのIT関連のジャーナリストも、このサービスに対して批判的で冷ややかなアメリカ市民の世論を反映させているかのような、下記の記事を配信しています。
(CNET NEWS 「オンライン匿名性の終焉--単一IDが与える影響を考える」
文:Sarah Perez
翻訳校正:川村インターナショナル 2008/12/04 07:30 )より部分転載。
http://japan.cnet.com/column/rwweb/story/0,2000090739,20384657,00.htm
「・・・・・「ユーザーデータの支配者」 最後にGoogleだが、われわれは同社が「新しい支配者」であるというジョークを紹介してきた。現実には、気の利いたテーマの無料ウェブメールやさくさく動くウェブ検索サービス、無料の分析ツールなどと交換する形で、人々は自分のアイデンティティを大量にGoogleに送ってきた。先週末にAllen Stern氏が述べたように、「 Googleは私の居場所も、何をやっているかもすべて知っている」のだ(この「ウサギの穴」の奥まで知りたいなら、「Google’s User Data Empire」を詳細に見ることをお勧めする)。
 George Orwellが著書の「1984年」で描いた恐るべき未来像はとっくに超えてしまった。テレビ画面からわれわれを見つめる「ビッグブラザー」など問題ではない。自分たちは信頼に値する企業だと約束するだけの株式公開企業に、個人データやアイデンティティを盲目的に喜んで差し出すような世界になったのだ。(中略)週末にFacebookに怪しげな写真を掲載されることで仕事を失い、再就職もできなくなるようになるかもしれない。だが、(承諾も得ずに)他人の顔の前にカメラやビデオレコーダーを近づけて撮影し、そうして得た画像を直ちにインターネットで公開することが社会的に許されていると多くの人が考えるような状況で、パブリックとプライベートの線引きをどのようにしたらよいというのだろう。(後略)」

 上記の記事は長文でHPで全てお読みいただけますが、ネット上での匿名性等に関するアメリカで下りた司法判断、興味深い判決のレポートと言えるでしょう。
 一度ネットにアップロードされた情報は半永久的に消し去ることは出来ないという事実、匿名ではなく本名でインターネット上で意見を表明することが一般的と思えるアメリカで、普及に伴うインターネットの注意点、諸問題が先行して問い直され始めているのかもしれませんし、「社会保障番号」やクレジット・カードなどの普及率の高さ、インターネット上での決済などにネットを使う事が多い、利用頻度が高いだろうとの背景が推察できますから、プライバシー問題は日本よりより深刻に受け止められていると私は思っています。

 アメリカと日本、「インターネット・リテラシー」というものが、どちらの国でより進んでいるか、最近アメリカ本土を訪問していない私にはよく解らないのですが、貧困層へのPCとインターネット回線無料供与を行なっているというアメリカの地方自治体の事例から察するに、どうやらアメリカのほうが進んでいるような気がします。厳しい財政状態の多い日本の地方自治体の現状も影響するのでしょうが、数えるほどしか市民への実践的な「インターネット・リテラシー」に関する行政施策は存在しないのではないかと思えています。情熱をもって取り組む自治体の事業も存在しますが、「ストリートビュー」問題に関する市民の告知を市のホームページ上できちんと行なった東京都・杉並区の取り組みは称賛に値すると思えます。
「ITMEDIAニュース」より
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/21/news045.html
「杉並区、「ストリートビュー」問題でGoogleに申し入れ
「ストリートビュー」をめぐる問題で、東京都杉並区がGoogleに対し、プライバシーへの配慮と削除要請に適切に対応するよう直接申し入れた。
2008年11月21日 11時19分 更新 」
以下、杉並区の公式HPより
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/news/news.asp?news=7866
「グーグル社「ストリートビュー」に対し申し入れを行いました
区民の皆さん、「ストリートビュー」をご存知ですか?
「ストリートビュー」は今年の8月からインターネットによりグーグル社から提供されている地図検索サービスで、公道上から撮影された写真と地図情報を組み合わせたものです。(中略)【画像の確認と削除申請方法】
1. グーグルマップにアクセスし、削除を希望する画像の住所を入力
  ◆ グーグルマップ http://maps.google.co.jp/maps
2. 「地図を検索」ボタンをクリック」
                      (後略)」

 この杉並区の区民に対する告知・広報などは、ぜひとも他の地方自治体にも取り組んでいただきたい市民に向けた自治体からの情報サービスだと思えます。また、インターネットにアクセスできない人々、PCをお持ちにない市民にもぜひとも印刷媒体での注意喚起や情報提供のサービスを行政としても取り組んでいただきたいと思います。なぜなら市民のみなさんの自宅や個人情報がグーグル社という一私企業の広告収入増加を狙ったサービスによってネットで公開されている可能性が高いのですから。
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